生命が誕生してから40億年、地球上では幾度もの生命の危機が訪れました。それは主に地球外からやってきた小天体の衝突や火山などの地球内部の活動によりもたらされましたが、ときに生命活動そのものが引き金になったこともあります。しかし生命は、その都度、したたかにそれらの危機を乗り越え、絶滅したグループに代わるグループが新たに繁栄することを繰り返すことで、多様性を増加させてきました。
言わば、大量絶滅は生命の繁栄を促した現象だと捉えることもできるのです。本展では、その中でも規模の大きかった5回の「大量絶滅」事変(通称「ビッグファイブ」)を、化石や岩石に残された様々な証拠から紐解き、「生き物たち」の生存をかけた進化の歴史を辿ります。
「ビッグファイブ」をテーマとする特別展は、国立科学博物館では初めてとなります。各種の古生物や火山、古気候・古海洋などを専門とする国立科学博物館の研究者10名による監修で、様々な角度から5回の大量絶滅の謎に迫ります。
生命の歴史の中で「進化」と「絶滅」は隣り合わせにある現象です。通常、100万年ごとに10%程度の種が絶滅すると考えられていますが、通常の絶滅とは異なって、短期間に75%以上もの分類群が絶滅したとされる現象(=大量絶滅)が過去に何度も起こっています。そのうち最も大きな5回の絶滅現象がビッグファイブです。ビッグファイブを境としてそれ以前と以降の生命の世界が大きく変わったため、それが次の新しい世界へと繋がる大きな原動力になったという考え方があります。
生命の歴史を大きく方向づけてきた「ビッグファイブ」は、現在、世界中の研究者が解明に取り組んでいる生命史研究上の大きなテーマです。小天体の衝突により恐竜が“絶滅”したことで一般にもよく知られる5回目の大量絶滅、中生代/新生代境界(K-Pg境界)の事変だけでなく、他の4回の事変についても、その概要が少しずつ理解されつつあります。本展では、科博の古生物研究者全員と火山の研究者が協力して、文字通り、私たちの知識と人脈をフル活用し、ビッグファイブの最新研究を紹介します。
中でも本展では、ビッグファイブのいくつかと深く関わるモロッコにおいて、オルドビス紀末の絶滅前の世界を垣間見ることができる「フェズアタ生物群」の化石や、デボン紀の巨大魚類ダンクルオステウスなどの発掘、三畳紀末の絶滅に関わる火山活動の調査なども実施しました。これらの世界初公開の調査結果をはじめ、本邦初公開となる標本・情報が満載です。ぜひ、ご期待ください。
総合監修
国立科学博物館 地学研究部 生命進化史研究グループ 研究主幹
矢部 淳
特別展「大絶滅展―生命史のビッグファイブ」広報事務局
株式会社リリオ内/担当:仁地(にんち)・川上
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